セメントレス人工股関節の回旋安定性とステム形状の間には関連がある.特に回旋方向の荷重に対しては機械的な固定が施された股関節ステム形状が良好な初期固定を得ると推測する.本報告においては各種人工股関節ステムデザインにおける固定法と回旋安定性の関係について明らかにすることを目的とした.
特徴的な形状を有する四種類の人工股関節ステムを対象とし,捻転を再現したシミュレーションと測定を行い回旋変位量について求めた.シミュレーションのために四種類の人工股関節ステムの有限要素モデルを構築した.測定には実際に臨床で用いられている人工股関節ステムと人工骨を用いた.解析と測定における共通の条件はi) 18.9 Nmのねじりモーメントをステム近位端に後捻転方向に負荷,ii)1800 Nの荷重をステム近位端に負荷,iii) 大腿骨遠位端を拘束,とした.
シミュレーション解析結果としてIntra-Medullary Cruciateステムの骨に対する相対的な回旋変位量は0.21 mmであった.PerFix SVステムは大きく回旋し,変位量は0.67 mmであることが明らかになった.VerSysステム,Duetto SIステムの回旋変位量はそれぞれ0.10 mm,0.03 mmと低値を示した.レーザー変位計を用いた測定によって得られた回旋方向の相対的変位量はそれぞれ,Intra-Medullary Cruciateステム0.37 mm,VerSysステム0.25 mm,PerFix SVステム1.87 mm,Duetto SIステム0.17 mmであった.得られた変位量に基づき各種人工股関節ステムの回旋安定性について材料力学的観点から評価した.
二つのアプローチによる回旋変位量の値から判断して回旋安定性に優れているのはIntra-Medullary Cruciateステム,VerSysステム,Duetto SIステムの三種類であることが示唆された.
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