バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
解説
便座への立ち座りについての研究-アームレスト付きトイレの効果について-
小川 哲史岩川 幹生酒井 武之
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2008 年 32 巻 4 号 p. 202-207

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抄録
「アームレスト付きトイレ」の立ち座り動作への効果を調査した一連の実験内容を紹介,解説する.まず,最初の実験では,高齢者を対象に「手すりなし」「L型壁手すり付き」「アームレスト付き」を評価サンプルとして,官能評価,動作解析,筋電図解析,圧中心軌跡解析を実施した.その結果,「アームレスト付き」は,官能評価で 3サンプル中,最も立ち座りがしやすいことや,立ち座り時の前屈角度,脚部の筋電位,足圧中心軌跡の左右変動が最も小さいことが示され,主観評価(官能評価)の面からも,客観評価(身体負担,安定性)の面からも優れる傾向が示された.次に,「L型壁手すり付き」「アームレスト付き」を評価サンプルとして,若年者を対象に行動観察(何も指示を与えずに用を足すシーンを模擬させ,行動を観察)を実施した.「L型壁手すり付き」では 16.7%の被験者しか「壁手すり」を使用しなかったが,「アームレスト付き」では 91.7%の被験者が「アームレスト」を使用することが観察され,「アームレスト付きトイレ」が高齢者だけでなく,若年者を含めた多くの人の使いやすさ(ユニバーサルデザイン)に寄与できる可能性が示された.
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© 2008 バイオメカニズム学会
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