2009 年 33 巻 4 号 p. 225-230
音声生成機構の観測に関する研究の歴史は,見えない部分を見る技術の歴史と言える.その時代における最先端の技術を駆使し,静止画のX線写真,動画観測が可能なX線映画,発話器官の運動軌跡を記録するX線マイクロビーム,X線被曝の問題がない磁気センサ方式等が開発された.1990年代にMRI(磁気共鳴画像法)装置が病院等に普及するに至り,音声生成研究者はこれを音声生成機構の3次元的な構造と運動の解析に利用できると期待した.しかし実際には,実時間で動画を記録できず,研究の目的によっては空間分解能が必ずしも十分ではない等の問題があった.ここではそれらの問題をひとつひとつ解決し,現在広く利用可能な技術にまで高度化した過程について述べる.