ヒトの乳児は周りの大人とのどのような相互作用を通じて,またどのような仕組みで,大人が話す言葉を獲得するのか.本稿では,この問題に対して,従来の観察に基づくアプローチを補うことが期待されている認知発達ロボティクスでの取り組みを取り上げる.はじめに,親との相互模倣を通じて乳児が母音を獲得していく過程を構成する研究について紹介し,親が乳児を模倣することの役割と仕組みについて議論する.次に,乳児に対する物の提示や物の名前の教示などの働きかけを含む,より自然な養育者の振る舞いのもとで音声模倣および語彙を獲得する過程を構成する研究を紹介し,これらの共発達を可能にする仕組みについて議論する.