抄録
交通事故における効果的な被害軽減対策を実施するには,人体の衝撃に対する応答特性を把握して,事故時における傷害発生メカニズムを解明することが重要である.また,人体の被る傷害から人体衝撃耐性(傷害基準)を推定し,傷害を予防するための保護装置の効果などを予測することが必要となる.本稿では,人体の衝撃に対する応答,ならびに傷害を予測するためのツールとして,志願者(Human Volunteer)を用いた実験について解説する.志願者を用いた実験には,様々な実験的な制約,ならびに課題があるが,その中で人体の衝撃耐性の確立に向けた取り組みに関する状況を紹介し,国内において比較的に傷害発生頻度の高い頚部傷害に関する研究について示す.さらに,近年,「予防安全」と「衝突安全」の融合として注目されている「統合安全」の領域における志願者を用いた実験の概要について示す.