我が国における交通事故の死者数は1990 年頃から年々減り続けているが,死傷者数は約90 万人と未だ高い水準にある.衝突ダミーとそれを活用した衝突安全法規は死者数の低減に大きく寄与してきた.その一方で,2000 年頃から人の献体実験データに基づき検証された,より高い生体忠実度を有する人体の有限要素(Finite Element: FE) モデルが開発・活用され,死傷者数を更に低減するために大きな期待が寄せられている.また,2010 年頃から筋活動を考慮可能な人体FE モデルが開発され,献体相当のモデルでは表現できない,実事故の身構えや回避操作における筋活動が人体の挙動や傷害に及ぼす影響を調べるために利用されている.