抄録
日本社会の高齢化の進展にともない,高齢者の嚥下機能の低下が問題となり,その予防やリハビリテーションが医歯学 において大きな課題となっている.その解決には,嚥下機能の客観的な測定・評価が必要であり,現在,嚥下造影や嚥下内視 鏡などが臨床で用いられている.この課題に対して著者らは,喉頭運動を無侵襲に測定できる喉頭運動測定器を独自に開発し, 嚥下音・筋電図と同時測定してきた.本来の目的は嚥下機能評価と嚥下リハビリテーションへの応用であったが,企業から食 品の飲みこみの評価の依頼が来るようになり,お粥,ビールなどの食品の性状・形状と嚥下動作との関係について明らかにし た.本解説では,嚥下困難者用のお粥の有効性評価,ビールの喉ごしの分析,および嚥下リハビリテーションのための喉頭挙 上訓練への応用について述べる.