本研究では,義足のアライメント調整に関する新たな評価法を提案する.臨床における義足のアライメント調整では, 義肢装具士の評価とともに,切断者の足底荷重位置の主観的評価が用いられている.後者の評価がしやすいように,著者らは切断者が立位時における足底荷重位置を記録する評価票を考案した.この評価票の有効性を検証するために,本研究では,まず義足の内外側方向のアライメントを変化したとき,評価票の記録および下肢の主要な力学的パラメータに与える影響について調べた.下腿切断者5 名を用いた実験の結果,記録された主観的な足底荷重推定位置は,適切なアライメントでは,踵とつま先を結ぶ線分付近に存在したが,内外側方向に変化すると,それに対応して有意に偏位した(p < 0.01).足底荷重推定位置の偏位は,立位時の足幅を足踏みで決めた「自由立位」よりも,被験者ごとに足幅を規定した「規定立位」の方が明瞭であった.その偏位と相関する生体力学パラメータは床反力の側方成分だけであった.これらの結果は,足底荷重位置の評価票が内外側方向のアライメント評価に有効である可能性を示唆していた.