2021 年 45 巻 2 号 p. 75-79
スポーツでは,適切な状況の判断や予測,巧みな運動調節などを実現する高度な脳情報処理が不可欠である.とくに, 野球の打撃のような場面では,1 秒未満の時間で,こうした一連の処理を的確に実行しなければならない.しかしながら,厳しい時間制約下での脳情報処理の仕組みについては未解明の点も多く,それらの特徴を評価することは容易ではない.本稿では,野球の打撃やテニスのレシーブを模した素早い感覚運動課題を遂行している際の脳情報処理の働き,いわば感覚運動“脳力”の評価を試みた研究事例を紹介する.