抄録
視線は,その個体が今何に興味をもっているかを表すだけでなく,次に何が起こると思っているのかといった心の状態も
反映される.また,視線の移動順序や注視時間は,その個体が対象をどのように理解しているのかを知る手掛かりとなる.ヒトの幼児やチンパンジーなどの類人猿は,頭部の固定や計測機器の装着が難しいため,視線を詳細に調べることが長い間困難であった.しかしながら,近年非侵襲的な方法で視線を計測する技術が発達し,これらの種でも様々な研究が行われている.本論文ではこれまで行われてきたヒトとチンパンジーのアイトラッキング研究について,特に比較研究に焦点をあてながら概観し,今後の展望について考察する.