2023 年 64 巻 2 号 p. 84-94
説明的文章の要点把握のための理論として,佐久間(1989)が注目されてきた。佐久間(1989)によると,統括という概念によって文の要点としての重要度を判定できるという。しかし,佐久間(1989)の統括という概念には不明確な点が残され,文の要点としての重要度を適切に判定できない場合がある。そこで,本稿では,統括という概念の代わりに,関連性理論における文脈効果(認知環境の改善)に着目し,説明的文章の中の文の要点としての重要度は,読み手の認知環境の改善度合いによって決定されるとした。問題提起・答え,まとめ,抽象・具体,逆接に着目するという読解方法が有効な理由は,これらが文脈効果と関わるためである。