抄録
本研究では “咀嚼すること” の評価として, 種々の食べ物を咀嚼した時の心拍数とエネルギー消費量に及ぼす影響について検討した.被験者は20歳代の健康な女子10名であった.検査食として, 硬さが異なる食品と同一素材で調理法が異なる食べ物を3回咀嚼させて咀嚼前と咀嚼中の心拍数とエネルギー消費量および咀嚼後30分までの腋下温度を測定した.食べ物を咀嚼している時のエネルギー消費量はガム咀嚼時の値を用いた.この結果から, 硬さが異なる食品と同一素材で調理法が異なる食べ物を咀嚼した時の心拍数とエネルギー消費量は上昇したが, 食べ物が硬いか軟らかいかの差異は見られなかった.しかし, 腋下温度は経時的に上昇して硬い食べ物ほど高い値で変動する傾向を示したことから, 時間をかけて充分に咀嚼することの有用性が示唆された