1996 年 29 巻 4 号 p. 62-75
統合という問題を分化との関連において論じる.個人にせょ,集団にせよ,組織にせよ,そのシステムの分化の程度に応じた統合をはかることが,システムの発展や成長のために要請される.分化と結びつけられることなく統合ばかりを旗頭にするようでは,個人レベルでは独断的で権威主義的なパーソナリティ,組織レベルでは(表現は適当ではないが)ファシズムのような組織を生み出してしまうことになる.本稿では,「分化に応じた統合」という観点から,複数の分析レベルにまたがって議論が成立するようなクロス・レベル・イシューが試論的に展開される.