2001 年 35 巻 2 号 p. 95-113
本稿は,HPC産業において,日米企業が顕著に異なる性能向上アプローチを選択し,それぞれ独自の性能進化を実現したという事実を明らかにする.その上で,個別企業の資源プロフィールと競争環境とが時間展開的に相互規定関係にあるという点に注目することによって,発見事実の説明を試みる.新規参入を契機とした競争環境の変化によって,個別企業レベルでは既存企業が既存の資源蓄積をベースにした新たな技術的可能性の探索行動とその実現に注力しなくなるため,産業レベルでは既存の資源蓄積に基づく性能進化の可能性が閉ざされることが起きうる,というのが最終的な主張である.