2003 年 37 巻 1 号 p. 68-81
3次元CAD技術と開発効率の関係性を観測すると,理論的 な帰結と実証分析の結果との間には不整合性がある.なぜこのような不整合がおこるのであろうか.本論文は,3次元CAD 技術と開発効率との間の関係を,企業間コミュニケーションを考慮しながら共分散構造分析を行ったものである.分析結果として,3次元CAD技術は,問題解決サイクルの数を減らして開発効率の向上に貢献する正の効果と,企業間のコミュニケーションの量や頻度の増加によって問題解決サイクルの数を増やす負の効果を同時にもたらしていることが見出された.この結果により,前述した不整合はこれら両方の効果が打ち消しあうため,3次元CADの使用と開発効率との間に相関が見出せなかったと解釈できよう.