2009 年 43 巻 1 号 p. 20-28
この論文では組織の自己産出系論を解説する.これはN. ルーマンによって提唱された理論で,C.I.バーナードの「協働」やH. A. サイモンの「決定前提の連鎖」をふまえて,組織自身が行為するかのように見えるしくみを,より厳密に再構成したものである.
ここでは,まず,そのしくみを「組織としてふるまう」ことの相互参照-自己参照ネットワークという形で定式化する.相互参照-自己参照ネットワークとしての組織は作動的に閉じており,それによって環境に開かれる.それゆえ組織は外部の環境に影響されるが,内的な組織/環境イメージにのみ反応する.この点が自己産出系論の最大の特徴である.