ソシオロジ
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論文
在日コリアンの一般労働市場への編入に関する一考察
――日本企業のアジアへの市場拡大とブリッジ人材としての役割期待――
鄭 康烈
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2019 年 64 巻 1 号 p. 3-19

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抄録

本論の目的は、日本に長期に定住するエスニック・マイノリティである在日コリアンに焦点を当て、こうした者が代の日本社会の文脈のなかでいかに一般労働市場に編入され、日本企業で特定の役割を担っているのかを明らかにすことである。在日コリアンへのインタビューや企業の公開資料の分析の結果、従来語られてきた就職差別の経験とは照的に、二〇〇〇年代後半以降、新自由主義グローバリズムが日本企業の経済活動をアジアに拡大させる大きな潮流なか、海外留学を経て人的資本を蓄積した多言語話者としての在日コリアンが、高度外国人材として日本企業に希求れる形で一般労働市場への編入がなされていることが明らかになった。その際、在日コリアンが担う役割とは、二国の経済活動を仲介するブリッジ人材としてのものである。日本企業における高度外国人材の登用は、日本語や日本型用慣行の壁によって進んでいないことが指摘されてきたが、日本で生育した在日コリアンがもつ性質は、こうした障を打ち消すものとして作用していると考えられる。近年、国内人口構造の変化による労働力不足を背景に、海外から規に流入する移民労働者への注目が増しているが、新たに日本にやってくる技能実習生や留学生、高度外国人材などは区別される、長期定住型のエスニック・マイノリティである在日コリアンがいかにホスト社会の一般労働市場に組込まれ、その一部を担っているのかを示した点が、本研究の成果である。

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