社会政策
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ドメステイックバイオレンス(DV)被害者の住宅確保の困難性
葛西 リサ
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2008 年 1 巻 1 号 p. 115-127

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抄録

近年のドメスティックバイオレンス(DV)被害者の増大を受けて,2001年,配偶者からの暴力防止および被害者の保護に関する法律(以下DV防止法)が施行された。その結果,(1)相談(2)保護に関しては各都道府県に最低一ヵ所ずつ配偶者暴力相談支援センターの設置を義務づけるなど,具体案が明記された。しかしながら,自立支援,特に生活の基本となる住まいの支援については既存施策の有効活用という点に止まった。多くの白治体は,DV被害者に対して公営住宅優先入居制度を設けている。しかし,この制度は高倍率である上に,応募時期が設定されているため,緊急に住宅を必要とするDV被害者にとっては利用し難いものとなっている。被害者の多くは逃避時に困窮しており,自力で民間借家を借り上げる余裕がない。そのため,借金をして住宅を借り上げる者や,親類・知人宅での仮住まいを繰り返すといった不安定な居住環境を強いられている者の存在が確認された。

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© 2008 社会政策学会
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