2018 年 10 巻 2 号 p. 8-22
本稿では,同居する親が本人の親か配偶者の親か,核家族世帯なのかといった世帯類型に着目しながら,福井県において未就学児を育てる男女の労働と生活の実態を考察することで「福井モデル」をジェンダー視角から検討し直すことを目的とする。 分析の結果,以下の点が明らかになった。福井県では三世代同居が一様に女性の就業確率を高めるのではなく,女性本人の親と同居することが就業確率を高め,家事の頻度は男女ともに三世代同居することで軽減されるが,男性はもともと女性よりも頻度が少ない家事をさらに軽減させる。一方,男性が自分の親と同居することは,毎日子どもの世話をすることにむしろマイナスの効果がある。三世代同居で親が子育てや家事を支援し女性の正社員就業を促す,という単純な構図ではなく,世帯内のジェンダー平等を阻害する可能性があることも示唆される。