社会政策
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所得政策の現在
厚生年金保険適用拡大(2016年10月)による新たな賃金要件
―既存の参照基準からの逸脱と低賃金雇用者の排除―
山田 篤裕
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2019 年 10 巻 3 号 p. 39-52

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抄録

 2016年の厚生年金保険の短時間労働者への適用拡大では,新たな賃金要件が設けられた。本稿では,この要件に焦点を当て,これまでの参照基準との歴史的連続性,新要件導入で適用拡大から排除されてしまった人々の規模,適用拡大による年金給付水準への波及効果を検討した。 本稿の知見は主に3つある。第一に,新たな賃金要件は,参照基準の「最低賃金」から「国民年金との均衡」への変更,すなわち従来の参照基準からの「逸脱」であったと評価できる。第二に,新たな賃金要件を設けたことで,もし全事業所に適用拡大していれば得られた効果とほぼ同等の,多くの低賃金労働者を適用拡大から排除する効果があった。第三に,大幅な適用拡大は平均賃金額(標準報酬平均額)を低下させることで,年金給付水準を引き下げる可能性がある。今後,適用拡大を進めるに当たっては,政策的に世代内・世代間の給付格差を改善するよう,適用拡大を図るオプションも考えられる。

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© 2019 社会政策学会
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