2020 年 12 巻 2 号 p. 10-18
福田徳三(1874-1930)といえば,日本における経済学の創成者としてよく知られている。また,戦前期の社会政策学会でも精力的な活動を行った中心的人物として歴史に刻まれている。その福田に関する著作集全21巻が現在刊行中であるが,この巻数からしても福田の著作量がいかに膨大であったかがわかるだけでなく,学問的な守備範囲の広さということにも圧倒されるであろう。
2020年の本年,社会政策学会は戦後再建70周年を迎えた。1897年の学会発足からはすでに一世紀以上が経過している。そうしたときにこそ,戦前期の巨人と評された福田に焦点を当て,その作品のなかから社会政策・労資関係論を抽出して古典的な教訓を引き出すことは,現代にも強く響く有益なメッセージに繋がるだろう。