100年前のパリの平和条約とILOの創設,恒久平和と社会的正義,国際労働保護法制への「後発国」日本の対応を検討する。平和条約の「第13編 労働」は,労働者の「wellbeingが至上の国際的重要性をもつ」という総力戦を踏まえた要請に沿う画期的なものであった。「労働者のマグナカルタ」といわれた労働9原則・労働保護法制を福田徳三はいち早く日本に紹介した。
この労働憲章を決めたパリの国際労働法制委員会と日本の代表(岡実ら),後進国日本へのインパクト,国際労働会議への日本の労働代表選出問題,そして治安警察法第17条と労働組合法案,労働問題・労働行政の農商務省から内務省社会局への移管,河合栄治郎の「官を辞するに際して」「社会政策の分岐点」等を検討し,あわせて福田徳三の国際労働問題への関わりも含め,これらの営為の後世への遺産を考察したい。