本稿では,雇用政策と所得保障政策の両面からイギリスにおける障害者の労働市場参加に向けた施策の現状を分析する。
雇用政策は,障害者のニューディール政策では任意参加のプログラムであったが,その後のプログラムで義務化と個別化が進んでいる。所得保障政策は,障害者に対する所得保障を「補償型」,「稼働代替型」,「追加費用型」,「社会扶助型」の4つの形に分類する先行研究を用いて分析した。「稼働代替型」の基準が障害程度から労働可能性へと変化し,「追加費用型」は稼働年齢を対象にしたものが設定されるようになった。そして,現在「社会扶助型」は他の制度との統合が進もうとしている。
イギリスの障害者の労働市場への統合過程は,プログラムが展開される前後で所得保障制度の見直しが行われている。本稿では,雇用政策と所得保障が連動しており,所得保障制度を活用した労働市場中心型への移行が進んでいることを示した。
抄録全体を表示