労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査(2014年)」の調査票情報に基づき,在職老齢年金(在老)や再雇用時の賃金低下による高齢者の就業抑制効果および年金繰上げ受給の決定要因を明らかにした。主な知見として第一に在老は就業率を男性62-64歳で-11%,女性60-61歳で−23%引き下げているが,男女とも65-69歳ではその就業抑制効果を確認できない。第二に,再雇用時の賃金低下は在老の就業抑制効果に匹敵し,男性60-69歳で-10%就業率を低下させる。第三に繰上げ受給率は,男性で健康不良であると8%高く,失業していると14%高かった。政策含意として,合理的理由によらぬ賃金低下の是正が進めば,在老の就業抑制効果は65-69歳でも現れる可能性がある。また繰上げ受給が高齢失業者の所得保障機能の一部を担っているとすれば,将来の繰上げ減額率改定の際は,貧困リスクへの影響も慎重に検討する必要がある。