2020 年 12 巻 2 号 p. 101-112
労働者のメンタルヘルスの維持向上が重要な課題となっている。日本ではこの10年来「適応障害」患者数の増加がみられるが,その背景については明らかにされていない。本稿では,「『適応障害』患者数の増加は,職場不適応が増加していることに一因がある」と仮説を立て,労働者を対象とした国際調査,国内調査結果を用い検証した。国際調査結果より,諸外国に比べ日本は職場へのストレス感が高まり,職場での人間関係が悪化していることが示唆された。国内調査結果より,労働者が「仕事」「職場での人間関係」に困っていると感じる割合が増加し,気分の落ち込みとの相関が高まっていることが明らかになった。「職場での人間関係」が重視される「メンバーシップ型雇用」である日本の職場は,現代労働者を取り巻く環境の変化により「適応障害」を引き起こしやすくなっていることが推察された。