社会政策
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小特集■大学教職員の不安定就業問題
専業非常勤講師という問題
―大学教員の非正規化の進展とその影響―
上林 陽治
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2021 年 12 巻 3 号 p. 73-84

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抄録

 大学の非常勤講師のみで生計を立てるいわゆる専業非常勤講師は,1995年を境に大学教員における割合を高め,1998年には4万5370人(延べ数)だったものが2016年には9万3145人(延べ数)へと倍増し大学教員の3分の1を占めるに至った。これら専業非常勤講師は,週8コマ程度を受け持たない限り,年収300万円にも届かない高学歴ワーキングプアである。

 増大の原因は,1991年から始まった大学院重点化計画による博士課程修了者の増加に見合う正規教員等の職が用意されなかったことにあるが,この問題が放置されたのは,正規「専務教員」が大学院重点化政策の過程で大学院へと移行し,少なくなった学士課程の「専務教員」の隙間を埋めるべく高学歴ワーキングプア層の専業非常勤講師が活用されていったことである。

 すなわち大学経営は1990年代以降に政策的に生み出された高学歴ワーキングプアの専業非常勤講師を活用することで成り立っているのである。

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