社会政策
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小特集■大学教職員の不安定就業問題
【実践報告】36協定締結権を行使し,専任教員の過重労働の是正と非常勤講師の雇用確保をめざす労働者代表の新たな可能性について
―日本大学の非常勤講師5年雇い止め問題を事例に―
今井 拓
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2021 年 12 巻 3 号 p. 85-92

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抄録

 首都圏大学非常勤講師組合は,2017年11月以降,日大本部がすすめる非常勤講師の大量雇い止め,コマ減に抵抗する活動を展開した。就業規則制定過程の瑕疵に対する刑事告発,日大ユニオンの結成,日大ユニオンの候補の経済学部労働者代表選出(2018年度),雇い止め,コマ減に対する民事裁判提訴などである。この中で,労働者代表を務めた経験は36協定の意義や効力について再検討を行う契機となった。残念ながら選出には至らなかったが,2019年度の代表選においては,非常勤講師の雇用・労働条件を確保する為に次の二つの公約を掲げた。①日大本部に追従し,経済学部長が非常勤講師の解雇,雇い止め,コマ減に踏み込んだ場合は,36協定の締結自体を拒否する。②専任教員の基準(5コマ)を上回る担当科目は36協定の対象であり,大学院の担当等やむを得ない場合にのみ360時間(通年3コマ)を上限に認める。労働者代表選を軸に,教職員組合,非常勤講師組合の連携が実現できるならば,専任教員の研究条件の確保と非専任教員の労働条件の改善の為の活動に新たな可能性が拓かれると思われる。

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