2021 年 13 巻 1 号 p. 107-119
本研究の目的は,スキル・ミスマッチが賃金に与える影響を検証することにある。具体的には,同じスキルを獲得したにもかかわらず,より低いスキルしか求められない仕事に就いた者(スキル過剰者)とそのスキルに見合った仕事に就いた者(スキル適当者)の賃金を比較する。また,より高いスキルが求められる仕事に就いた者(スキル過少者)の賃金をスキル適当者のそれと比較する。労働意欲と仕事満足についても同様の分析を行う。
分析の結果,①スキル過剰者はスキル適当者に比べて賃金が低いこと,②スキル過少者の賃金はスキル適当者のそれと比べて高いこと,③スキル過剰者はスキル適当者に比べて労働意欲と仕事満足がともに低いことが明らかになった。本研究の分析結果は,今後の経済成長のためには,社会的・企業的・個人的なロスとなるスキル・ミスマッチを回避する手立てを考えることの必要性を提起している。