地域雇用政策が実質未経験の加賀市はなぜ,地方創生事業と生活困窮者自立支援事業の接合という挑戦的課題に取り組んだのか。本稿は本小特集の第1論文として,まずは加賀WCPの発端と経緯を概略する。続いて,第2・第3論文で援用される分析枠組みを説明する:多様なコンテクストの織りなしがフロントラインの実践を構造化し,そこから結果が生じる[van Berkel et al. eds., 2017]。
後続論文の内容を先取りして一言で表わすならば,次のように言える:加賀WCPは,社会サービス供給における不確実性をより大きくした。加賀WCPの政策対象者は,地方創生事業の想定よりずっと多様で不安定で予測困難だからだ。こうした対象者へのサービス供給をめぐる合意形成,それに適したガバナンスの構築は困難であった。本事業は,事業諸主体の理念や目的の「緩やかな連結」[Weick, 1969]によって実行されてきたと言えよう。
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