2021 年 13 巻 1 号 p. 74-83
本稿は,地方創生事業で行われる仕事づくりが,地域雇用政策として発展する可能性があるか検討することを目的としている。地域雇用政策においては包括的なガバナンス能力の必要性は指摘されているが,地域雇用政策の基盤を持たない地域がその能力をどのように形成するかについては従来十分な検討はなされていない。本稿では加賀WCPを事例に,自治体にとって新規事業ともいえる地方創生事業において,権威と正当性という視点からフロントラインの動機づけが事業のガバナンスにどのように影響したか検討する。加賀WCPでは,当初トップダウンで事業がスタートした後,各関係者が「ルース・カプリング」し,経験豊かな受託事業者の職業的専門性が活かされるかたちで事業が進行した。これらは,地域の生活基盤にかかわる課題を顕在化させる仕組みをつくる一方,行政内部の調整や地域産業との関係づくりには資源制約や権威の側面から課題を抱えることとなった。