2021 年 13 巻 1 号 p. 84-95
本稿の目的は,加賀WCPの受託事業者がなぜ短期間のうちに事業を立ち上げて軌道にのせることができたのかを明らかにすることである。そのためにまず,事業者が拠点とする大阪府下において自治体と民間企業の連携が就労支援事業の遂行に際してどの程度進んできたのかを量的調査に基づいて分析した。そのうえで,受託事業者が大阪府豊中市でいかに就労支援の経験を積んできたのか/それを加賀WCPに応用したのかを質的調査から検討した。
本調査に基づくと主に2点が明らかとなった。第1に,全国に先駆けて就労支援事業を展開してきた大阪府の自治体において,就労支援の体験や就職先を提供する民間企業と連携することは,例外的な自治体を除くと限定的であった。第2に,受託事業者は数年のうちに約10社と協力関係を結ぶことに成功したが,その背景には就労支援の受託事業を積み重ねてきた経験を,加賀市の状況に調整して再構築できたことによることが明らかとなった。