日本における障害者雇用政策の中心となっているのは雇用率制度であるが,一方で雇用率が実質的に適用されない小規模な企業においても多くの障害者は雇用されている。本論文はこうした雇用率制度の適用外企業における障害者雇用の構造を解明することを目的としている。方法としては知的障害者雇用の歴史を検討し,そこから雇用率制度の適用外企業における障害者雇用の実態に迫る。具体的には,以下の3点を明らかにする。一点目は知的障害者の雇用が雇用率制度の対象となる以前から増加傾向にあったという点,二点目は能力に応じて知的障害者の賃金は調整されていたという点,三点目は企業が知的障害者の特性に合わせた配慮を実施していたという点である。これらの検討を通して,雇用率制度の適用外企業において知的障害者は条件付きで機能する労働力であることを示す。