本稿では,単身高齢女性の貧困の現状を念頭におきながら,シングルマザーの公的年金加入をめぐる諸問題を取り上げた。そのために,シングルマザーを対象とした生活実態調査(アンケート調査,聞き取り調査)の結果から,シングルマザーになる前と後での年金加入の変化を分析した。その分析からは,高齢期の低年金が予測され,その要因として,離婚や死別と同時に年金加入の移動が強いられ,細切れ的で不安定な加入になっていること,自分の将来の年金より現在の子育ての生活を優先していること,年金加入に対する認識の低さなどが明らかになった。また,いわゆる第3号被保険者制度の評価に関していえば,離婚前の専業主婦のメリットが,離婚後はデメリットに転化し,結果として安定した年金加入の困難に帰結していることを指摘した。