2022 年 14 巻 2 号 p. 70-81
本論文の目的は,豊中市への来談者のインタビューを分析することで,市のサービスへの信頼感がどのように醸成されているのかを明らかにすることである。ロバート・K・マートンは,官僚制組織の特徴として「人間関係の非人格化」を挙げたが,インタビュー調査では,そうした声はあまり聞かれず,行政サービスへの信頼感の高さがうかがえた。調査では,人間関係を人格化させた「伴走型」支援の一端を垣間見ることができた一方,制度・政策自体への疑問の声も聞かれた。「職員への信頼と制度・政策への不信」という,一見,相反する意見があることは何を意味するのか。本論文では,「伴走型」支援のミクロなレベルでの達成とそれが来談者にもたらす影響を分析するとともに,マクロなレベルで見たときの,その限界――「ストリート・レベルの官僚制」(マイケル・リプスキー)の両義性――について明らかにする。それは,後期近代社会の制度・政策評価の陥穽である。