本論文では,大量失業が懸念される危機にあたる世界経済危機とコロナ危機において,ドイツがどうそれを防ぐ政策を講じてきたかを検討する。かつて西ドイツでは不況時には早期退職制度の拡充による労働力削減を対処法としたが,年金財政の問題や生涯労働の長期化を求めるアクティベーションへの転換で政策の中心から外れる。危機下で政府の政策の核は,従業員を(部分)休業させ,雇用主の負担を下げつつ,給与減少分の一部を補填し雇用を維持する操業短縮手当となった。世界経済危機では,政府が手当の要件を緩和し,積極的にその活用を促した。その結果,大量失業を出さず「雇用の奇跡」を可能にした。その経験からコロナ危機下でさらに手当の要件が緩和されており,大規模に利用された。手当の対象外の者への政策展開が課題だが,同危機では低賃金労働者や非就労者,個人事業主への施策もある。今後,休業中の職業訓練促進の体制強化が求められる。