2022 年 14 巻 2 号 p. 8-19
「地域共生社会」あるいは「一億総活躍社会」の実現に向けた施策が進められ,地域の生活支援における総合相談窓口化の定着とアウトリーチの重要性に注目が向けられている。本論文は,相談者を相談窓口や支援先に繋ぐ役割に注目する。社会的孤立やひきこもりに加え,単身化・単独世帯化により家族との繋がりが希薄になっている層が増えている地域社会において,アウトリーチによる対面式を基本活動とする民生委員・児童委員は,コロナ禍で基本活動の中止を余儀なくされており,活動の見直しが急務となっている。地域社会を見渡せる地位にいる民生委員・児童委員に対するインタビューの結果から,地域資源の活用への試みの差異とそもそもの資源格差で構成される地域性が,社会的包摂の成否に関わっていることを示す。活動の中核が対面であることが明確になり,過去の事実発見に具体的な示唆が得られた。