社会政策
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労働に「将来」を読み込む思考はどう構築されたか
――工場法制定過程におけるジェンダーの差異化――
鈴木 恭子
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2023 年 14 巻 3 号 p. 132-143

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抄録

 日本の雇用労働における格差にかかわる「将来を読み込む思考」は,どのように構築されたのか。本稿はその重要な契機として1911年の工場法制定をとりあげ,政府がどのような意図と論理にもとづいて女性への保護規定を求めたかを考察する。工場法制定にいたる過程で,政府や経営者は女性の国家・家族における役割や工場労働のあり方を議論し,「女性労働」に新たな意味づけを行った。とくに,①女性の役割は「出産」に焦点をあてて本質主義的に定義されたこと,②「将来の役割」が現在の労働を規制する根拠とされたこと,③企業は工場法に一貫して反対したものの,制定後はすみやかにジェンダーに対応した雇用管理を形成したこと,を指摘したい。工場法制定は,こんにちなお大きな影響を及ぼす「将来を読み込む思考」を雇用の場および社会にインストールするひとつの契機となり,結果として雇用の場でのジェンダー秩序形成に大きな影響を及ぼした。

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