「地域共生社会」に向けた地域包括ケア体制や住まい支援の整備が進む中、住居のない者についても、地域に根付いた居住を可能にする支援の在り方を検討する必要がある。しかし住居のない者への公的支援は、施設入所を経由した居宅移行を基本としており、支援過程で生活地域が繰り返し変わりうる制度設計になっている。そこで本研究は、特に移動の生じやすい大都市部に着目し、東京都特別区部における支援システムを介した地域間移動の実態把握と、地域間移動が生じるメカニズムの解明を試みた。18区の福祉事務所への調査結果から、住居のない者への対応は生活保護の適用が大半を占め、特に遠方への移動は、無料低額宿泊所等の民間支援施設へ入所する際に起きている実態が明らかとなった。地域間移動は、入所先地域が限定されないという制度上の前提条件に加え、施設の供給量と、福祉事務所の入所先確保の方法という2つの要因により助長されうると結論を得た。