社会政策
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16 巻, 3 号
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特集「若者」問題の軌跡:その過去、現在、未来
  • 松丸 和夫
    2024 年16 巻3 号 p. 27-32
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     共通論題セッションでは、「若者」問題の過去・現在・未来をテーマとして、3人の報告者が、それぞれのフィールドワークの調査研究の成果に依拠して、報告をした。それらの報告に対するコメントは、木本喜美子会員が、コメンテーターとして、本学会誌に寄稿しているのでそちらを参照してほしい。また、共通論題への参加者からは、「若者」問題の現状認識、国や地方政府の取組に対する評価、調査研究方法に関する多岐にわたる質問や見解が表明された。

     「若者」問題の本質は、この30年間に変質したのか? もし変わったとすれば、その本質を具現化させる労働市場、企業、地域社会、地方自治体を含む政府の変化を跡づける必要がある。政策としての社会政策が、対峙すべき現実と政策の方向について、あらたな状況に対して何が求められるのか。議論は今後も続くであろう。

  • ――20名のインタビュー調査から考える――
    堀 有喜衣
    2024 年16 巻3 号 p. 33-45
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     本論文では、2023年に実施した20人のオンラインインタビュー調査を用いて、1990年代後半から2000年代前半の景気が悪化した時期に学校を卒業した就職氷河期世代研究の現状を明らかにした。

     就職氷河期世代のキャリアの困難は、非正規雇用の連続として現れているわけではなかった。新卒正社員であっても労働条件の悪い就職先をキャリアの起点とするケース、正社員経験はあるが何度か正社員を離職し、正社員と非正社員を行きつ戻りつしたり、無業・失業をたびたび経験するキャリアが多数存在する。本稿ではこうしたキャリアを、ヨーヨー型キャリアと呼ぶ。

     現在の就職氷河期世代支援は、正社員ないしは就業を目指すという点で再分配にもっぱら焦点が当てられているが、同時に社会に居場所を見つけることが難しいという実存を否定するような体験への社会的な承認について、また若い世代に地続きの問題として伝えていくための方策について議論を重ねることが求められる。

  • ――目的・手段・主体性――
    中澤 高志
    2024 年16 巻3 号 p. 46-60
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     2010年代以降、懸案であった若者の雇用情勢は好転したが、人口減少と東京一極集中、そして経済の低成長性が国家的な課題として浮上した。国家はこの課題を解消するために若者を動員しようとしているが、事態が改善する兆しはない。地方圏への移住を希望する若者は少なくないが、それを実現するためには高い主体性が求められる。多くの地方圏出身者は、結婚・子育てを希望してもそれを実現するだけの経済的基盤を確保しえないでいる。かくして国家による若者の動員は、マクロレベルでのボイコットに遭遇している。そして若者が国家の負託をボイコットできるのは、結婚、出産、移住の意思決定が個人の自由にゆだねられているからである。

     社会政策は、資本主義の発展がもたらす問題を解決するべくして生まれ、進歩してきた。社会・経済の縮小・衰退に由来する現下の問題に即した新たな理論や政策を創造するためには、息の長い努力が求められる。

  • ――「ノンエリート」の若者に着目して――
    居神 浩
    2024 年16 巻3 号 p. 61-76
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     若者から大人への移行期における社会政策の課題を議論する場合、それが資本主義社会の循環的な局面で起きているのか、構造的な局面で起きているのかを見極める必要がある。本論では社会階層、特に職業的に管理職や専門職への展望が見出しにくい「ノンエリート」の若者に着目し、彼らが大人への移行過程で直面する就職上の問題について、それがどのように政策課題として認知され、解決への道筋が形成されるのかを分析する。まず地域の中小企業へのマッチングを促進する自治体の事業として、大阪府の「産官学プラットフォーム構想」と「ダイバーシティ推進事業」を紹介する。次に京都府の「若者等就職・定着総合応援事業」における、あるフリースクールの取り組みを紹介する。これらの事業・取り組みの分析を通じ、地域の労働市場において、求職者である若者と求人企業との双方に働きかけミスマッチを解消する「労働市場(労働力)媒介機関」の機能と課題について論じてみたい。

  • 木本 喜美子
    2024 年16 巻3 号 p. 77-82
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     本稿は、社会政策学会の第148回の共通論題において討論者としての口頭報告内容を、研究企画委員会の依頼を受けて書き起こしたものである。第一に2004年の共通論題に至る若者、若者研究をめぐる動向を提示する。第二に就職氷河期世代に焦点を置き、世代間関係と世代内関係の視野からコメントする。第三は3名の報告者への質問内容である。

小特集1 障害者の雇用就労支援システムの現状
  • 江本 純子, 渡邊 幸良, 髙野 剛
    2024 年16 巻3 号 p. 83-86
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー
  • 金谷 信子, 冨田 哲治, 江本 純子
    2024 年16 巻3 号 p. 87-98
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     近年の障害者福祉政策の改革では、障害者福祉に一般市場の機能を適用させる政策が増えている。こうしたなかで障害者就労継続支援A型事業所は、障害者に雇用の場と福祉サービスを合わせて提供する事業として創設された。しかし一般労働市場と近接し接続することが求められている本事業の経営には課題が多いことも指摘されている。このため本報告では、全国の障害者就労継続支援A型事業所の経営データを用いた分析を行い、良好な成果を上げている事業所の特性について分析する。

     具体的には、障害者就労継続支援A型事業所の経営の成果(就労者の賃金、収支差、利益率および一般就労への移行状況)を規定する要因を、事業所の法人格や所在地、生産活動の内容、事業の特徴やサービス内容などについて検討し分析して考察する。

  • 江本 純子, 冨田 哲治, 金谷 信子
    2024 年16 巻3 号 p. 99-110
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     障害者雇用就労領域では、労働施策と福祉施策の連携を図り、障害の有無にかかわらず働く社会を目指しており、今後の労働政策のモデルとなる。障害者就労継続支援A型事業は、障害者を含む就職困難者の雇用や新しい労働社会に必要であり、地域の活性化にもつながる重要な資源である。しかし事業運営や作業訓練内容に詳細な規定はなく、運営や支援の実態は明らかでない。このため筆者は、障害者就労継続支援A型事業所の運営と支援の実態を明らかにし、障害者雇用システムの中で障害者就労継続支援A型事業所の位置づけ及び地域特性に応じて効果的に運営する仕組みを明らかにするため、障害者総合支援法による指定基準を満たすA型事業所の地方と都市部の事業主対象にインタビュー調査を実施した。

     本報告は、調査のうち地方分についての分析結果をもとに以下3点を明らかにする。①事業所の運営状況、②一般就労移行のための支援、③賃金向上のための工夫である。

小特集2 大阪府立高校通信制課程の政策変容と現在の実践
  • 長松 奈美江
    2024 年16 巻3 号 p. 111-114
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー
  • ――インクリメンタリズムの構造と「事業実践コミュニティ」の形成――
    筒井 美紀
    2024 年16 巻3 号 p. 115-127
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     長期的展望を示した大阪府教育委員会(1999)「教育改革プログラム」によれば当時、府立全日制高校155、定時制29、通信制1であった。この分布が示唆するとおり、通信制課程の政策的優先順位は低かった。同課程の実質的改編・拡充の提案はやっと2012年度になって、外部専門人材活用の充実の提案はさらに6年後の2018年度になってであり、以後ようやくスクールソーシャルワーカーの配置やキャリアカウンセラーの予算時間拡充が進められてきた。

     多様な困難を抱えた生徒が通信制課程に在籍するようになって久しく、彼らの進路とりわけ就職指導・支援は重要な課題であり続けてきた。それにも拘らず、そこへの資源投入は、なぜ長らく後回しにされてきたのか。本稿は、1990年代以降の大阪府立高校政策における通信制課程の位置づけを確認し、そのインクリメンタリズムを解明する。最後に、その過程で形成されてきた学校現場の連携を「事業実践コミュニティ」と概念化して提案する。

  • ――大阪府立桃谷高等学校の実態から見えてきたこと――
    田中 真秀, 居神 浩
    2024 年16 巻3 号 p. 128-140
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     本論は、大阪府立通信制高校の就職指導・支援の実態を解明しその課題を検討する。全日制とは大きく異なる学年・学級編成と教育課程と教員組織は、学校斡旋の就職に必要な細やかなプロセスとうまくかみ合っていない。卒業年次の異なる生徒が第1~8年次の各学級に在籍し、就職希望者が偏在している。授業時間はバラバラであり、教員が集まる機会ももち難い。しかも高校教員は小中校教員と比べ学級経営の意識は高くない。同時に多くの生徒は、学校斡旋に乗ること自体に困難を抱えている。このため、全日制のように担任が中心となって就職希望の生徒とやりとりし、進路指導部と連携することが難しい。このなかで就職指導・支援の効果を上げるには、校長のリーダーシップ機能が重要だが、それだけでは足りない。そこで調査対象校では、教員たちと学外関係者を含めた分散型リーダーシップを機能させ、学びの保障の先に進路の保障が実現されるよう努めてきた。

  • 御旅屋 達
    2024 年16 巻3 号 p. 141-152
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     本稿の主題は、公立高校通信制課程の生徒の就職が、地域労働市場を構成する諸アクターのどのような実践・相互作用において支えられているのかを明らかにし、高卒新卒採用を記述する新たなモデルについての試論を行うことにある。

     高校新卒採用は長らく「実績関係」をベースにした「学校経由の就職」、すなわち、校内選抜に基づいた選抜配分モデルとして理解されてきた。しかし、現在ではこうしたモデルは実効性を失っており、特に通信制高校など十分な資源を持たない高校からの就職について新たなモデルを検討する必要がある。本稿では、地域労働市場を構成する諸アクターへの聞き取りを通じて、それぞれのアクターがいかなるやり方で高校新卒者の就職を支えているのかについて検討した。結論部において、旧来型の選抜モデルとは異なる「アセットの贈与交換モデル」の構築の可能性について提示した。

大会若手研究者優秀賞
  • ――大企業ブルーカラーの昇進構造に着目した計量分析――
    瀬戸 健太郎
    2024 年16 巻3 号 p. 153-165
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は「ブルーカラーのホワイトカラー化」の中でも内部昇進制について、その成否を実証的に検証することにある。先行研究によれば、日本的雇用システムの特徴はホワイトカラーとブルーカラーが「従業員」として同一の人事管理の下に置かれることにあり、ブルーカラーにも昇進可能性があるとされる。しかし、内部昇進制は間接的な証拠に依拠して議論されるか、個別企業の事例研究によるものが多く、個人の職歴を追跡して直接的に検証したものは乏しい。本稿では「社会階層と社会移動に関する全国調査」の1965-1995年の4回分のデータを用いることでこの点を検証した。結果、⑴大企業ブルーカラーの昇進可能性は出生コーホートが下るほど低下しており、⑵大企業ブルーカラーの勤続年数の効果も乏しく、ホワイトカラーに近似した昇進構造を持っているとは言い難い。以上の結果は、内部昇進制について、先行研究は過剰に強調していた可能性を示唆する。

投稿論文
  • 河西 奈緒, 村上 小百合
    2024 年16 巻3 号 p. 166-179
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     「地域共生社会」に向けた地域包括ケア体制や住まい支援の整備が進む中、住居のない者についても、地域に根付いた居住を可能にする支援の在り方を検討する必要がある。しかし住居のない者への公的支援は、施設入所を経由した居宅移行を基本としており、支援過程で生活地域が繰り返し変わりうる制度設計になっている。そこで本研究は、特に移動の生じやすい大都市部に着目し、東京都特別区部における支援システムを介した地域間移動の実態把握と、地域間移動が生じるメカニズムの解明を試みた。18区の福祉事務所への調査結果から、住居のない者への対応は生活保護の適用が大半を占め、特に遠方への移動は、無料低額宿泊所等の民間支援施設へ入所する際に起きている実態が明らかとなった。地域間移動は、入所先地域が限定されないという制度上の前提条件に加え、施設の供給量と、福祉事務所の入所先確保の方法という2つの要因により助長されうると結論を得た。

  • 権 明
    2024 年16 巻3 号 p. 180-193
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2024/12/23
    ジャーナル フリー

     本研究は、大規模データ(CHARLS2018)による中国のダブルケアにかんする実証分析である。中国のダブルケアは孫の養育問題を起点に、孫の面倒を見ながら親ケアをしているパターンが最も多かった。また、自営業者・農業など時間的調整が容易な中高年女性がケアの責任を引き受けている。さらに子どもが公的部門や大企業など安定した職業に従事しても、中高年女性は複数のケア責任から逃れられない。年金や医療の社会保障制度での老後生活の保障が弱い現実がある一方、戸籍制度や労働市場における職業によって受けられる社会福祉の格差がある。中国のダブルケアは、農村から都市、小都市から大都市への人口移動、労働市場の構造、社会保障や戸籍制度から生まれるケア責任の再分配過程のなかで解釈すべきである。東アジアにおける共通の社会的リスクとしてのダブルケアを、社会政策研究として発展させていくことが課題である。

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