2010年代以降、懸案であった若者の雇用情勢は好転したが、人口減少と東京一極集中、そして経済の低成長性が国家的な課題として浮上した。国家はこの課題を解消するために若者を動員しようとしているが、事態が改善する兆しはない。地方圏への移住を希望する若者は少なくないが、それを実現するためには高い主体性が求められる。多くの地方圏出身者は、結婚・子育てを希望してもそれを実現するだけの経済的基盤を確保しえないでいる。かくして国家による若者の動員は、マクロレベルでのボイコットに遭遇している。そして若者が国家の負託をボイコットできるのは、結婚、出産、移住の意思決定が個人の自由にゆだねられているからである。
社会政策は、資本主義の発展がもたらす問題を解決するべくして生まれ、進歩してきた。社会・経済の縮小・衰退に由来する現下の問題に即した新たな理論や政策を創造するためには、息の長い努力が求められる。