2025 年 16 巻 4 号 p. 225-237
鉄鋼労働運動を築き上げた人々の中には、長きにわたって運動に携わり、その方向性に大きな影響を与えた人もいるが、関与が一定期間に限られた人もいる。それら多くの人々の活動の集積と相互作用を通じて、運動が形作られたわけだが、後者のような人々については、語られること少なく、歴史研究で取り上げられることも少ない。だが、彼らが果たした役割が小さなものであったとはいえない。本論文では、そのうちの二人、原田鼎と磯田一吉を取り上げ、限られた資料の範囲においてであるが、彼らの行動と発言に光を当て、戦後労働運動形成のプロセスについて、新たな知見を得ることを目指す。とくに戦後初期において、ホワイトカラー層が果たした役割が大きかったことに留意し、ホワイトカラー層出身の原田と磯田の事績に即して、その意義について考察する。