2025 年 17 巻 1 号 p. 6-18
構造改革の推進により、1990年代後半から賃金と物価の連鎖的な低下が続いた。2012年末からとられたアベノミクスでは、「デフレ脱却」が課題とされ、政権が賃上げに直接関与するようになり「官製春闘」と呼ばれた。賃上げの社会機運を醸成するには、人手不足を強調する必要があり、アベノミクスの成果を説明する場合には、有効求人倍率が多用されるようになった。しかし、これらは経済の実勢から遊離した政府の経済説明を促すとともに、有効求人倍率の見かけ上の増大を促すことにもなった。経済指標を総合的に分析すれば、現状の「人手不足」は、労働力供給の制約による絶対的な不足とは考えにくく、労働力の産業間配置機能についての政策検討が求められている。