企業別組合は,今日の非正規雇用問題に対して,いかなる役割と機能を果たしているのかを論じる。1990年代半ば以降,非正規雇用問題は,女性雇用の問題にとどまらず,男性を含む雇用問題となっている。企業別組合は,基幹的労働力となった非正規従業員の組織化を通じて,その格差是正へ取り組み始めた。基幹的労働力を改めて全部組織することによって,企業の存続・発展を図り,賃金・労働条件を改善しつつ,企業別組合の役割・機能を再生しようとしている。非正規従業員の格差是正は,従来のシステムに変容を迫っており,短時間正社員など別種の正社員制度が作られたり,従来の処遇水準を下げてでも昇給制度のある正社員制度を守りかつ格差是正を図ったりしている。また,外部労働市場から供給される非正規雇用の改善のためには,産業別職種別地域別労働市場での常用化をめざす労働組合による労働者供給事業が重要性となっている。