社会問題や労働問題に関する事実を歴史的に検証する際,事実関係を確認する資料としてしばしば新聞が利用されてきた。しかし放送開始から60年以上が経過し様々な出来事を映し出してきたテレビも,出来事を記録した重要な資料となりうる。近年のデジタル化と保存媒体の大容量化により,大量のテレビ番組の保存や再視聴が可能である。またインターネット配信などによりかつての番組を見ることができる機会も増えつつある。こうした状況は,これまで一部の研究者に限られていたテレビの放送内容に関する分析,検証の門戸を開くものといえる。本論では大学の研究室や研究者個人,あるいは市民による社会問題や市民運動の報道分析の可能性と課題について,筆者の法政大学環境報道アーカイブでの取り組みと,その成果を紹介しながら検討する。また浮かび上がってきた課題への対応として,規模を問わずに情報共有可能なアーカイブの相互ネットワーク化を提案する。