NPO法人ふるさとの会は,主に単身の生活困窮者に対し居住・生活支援を行ってきた。利用者の過半数は高齢者で,要介護の人,認知症の人,障害のある人も多い。株式会社ふるさとは,施設や病院等から在宅生活に移行する際など,保証会社の審査に通らないケースの保証人を引き受けてきた。そして2015年3月から不動産事業も始め,住まいと生活支援を組み合わせ,地域サロンを展開する「寄りそい地域事業」を開始した。この事業は,大家・不動産事業者が事業の主体になり,同時にコミュニティ再生の主体にもなることを模索している。「認知症になっても,馴染みの地域で,最期まで」を実現するために,機能障害を生活障害にしない生活支援・寄りそい支援を行う。家主が空き家を提供するためには,生活支援への信頼,つまり質を確保するための認定や保証の仕組みづくり,職員研修など,公的なオーソライズが重要な要素が多い。これを仕組みにすれば,「家主も担う地域包括ケアシステム」が促進され,貧困・格差への対応は言うまでもなく,年金(低所得者への対応),医療・介護(過剰サービスの適正化),子育て(交流・学習支援)の諸問題を視野に入れた取り組みになる。
抄録全体を表示