社会政策
Online ISSN : 2433-2984
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映像アーカイブを活用した日韓の戦後補償運動史再検証の可能性(<小特集>調査研究における映像資料利用の可能性と課題)
丁 智恵
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2016 年 7 巻 3 号 p. 79-89

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抄録

戦後半世紀ものあいだ,冷戦構造が保護幕となって,アジア・太平洋戦争の被害者の声が届かないまま日本人の集合的記憶は形成された。戦争の加害の記憶は忘却され,長いあいた「戦後」が続いたが,90年代にはこの意識は大きく変化した。1989年には昭和天皇が死去,またベルリンの壁が崩壊し,冷戦時代は終った。それまで冷戦構造のもと強権体制にあったアジアの国々が民主化し始め,アジア・太平洋戦争の個人被害の本格的な究明が始まった。この時代に,テレビをはじめとするマス・メディアにおいて,アジア・太平洋戦争における日本の加害について追究する番組が活発に作られ,新たな集合的記憶を形作っていった。本論文では,日韓の戦後補償運動のなかでも今回はとくにBC級戦犯の問題に焦点を当て,この問題が活発に議論された90年代を中心に,テレビや記録映画などの映像アーカイブを整備し,目録を作成し,内容を検討することにより,これまで見えなかった戦後補償運動史を再検証する。

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© 2016 社会政策学会
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