社会政策
Online ISSN : 2433-2984
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特集 外国人労働者問題と社会政策
浜松市と企業・大学・市民による外国人住民受け入れの経緯と課題
池上 重弘
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2016 年 8 巻 1 号 p. 57-68

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抄録

 浜松市では輸送機器関連の製造業現場を中心に外国人労働者,特にブラジル人が数多く就労している。本稿ではまず,2006年と2010年の浜松市の外国人調査に基づき,労働市場への組み込みの実態と問題点を指摘した。次に浜松市における多文化共生施策の展開を,3人の市長の時代に応じて「黎明」「本格展開」「発展的継承」と性格づけてまとめた。浜松においては,行政,市教委,国際交流協会,NPO,大学等,多様なアクターのゆるやかな連携とNPO活動の層の厚さが強みである。一方,生活レベルで外国人と接している地縁団体(自治会)や外国人を雇用したり外国人が従業している企業の関与が不足している点と,外国人当事者団体間の連携不足が弱みである。一般市民の間に認められるゼノフォビア(外国人嫌い)と外国人の不安定就労は多文化共生に向けた脅威と言える。しかし,移住者の第二世代が受け入れ社会と外国人をつなぐ存在となりはじめている点は大きな機会である。

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