社会政策
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小特集1 欧州の就労支援と所得保障:自己決定への模索
スウェーデンにおける失業と社会保障制度の変化
山本 麻由美
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2016 年 8 巻 2 号 p. 8-19

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抄録

 スウェーデンでは,1990年代以降に経済政策を転換したため,スウェーデンモデルが変化したと指摘されている。その結果,失業の状況をみると,1990年代以降,若者の有期雇用の増加による多数の短期的な失業と,それ以外の障害者,移民,低学歴者,中高年に集中している長期的な失業に二極化していた。同時期に社会保障制度では貧困リスクや受給者増の変化を受け止めつつ,それぞれの給付で受給者を労働市場に押し出す方向の変更がなされた。結果として,公的扶助制度が最後の砦として失業者の生活を支えている。スウェーデンの社会保障制度は,その創設期には公的扶助の対象に失業者を含まず雇用政策で対応する方針をとっていたが,公的扶助制度における82年の法改正と実際の運用状況から判断して,社会保障制度の体系においてもスウェーデンモデルが変化したということができる。

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© 2016 社会政策学会
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