本稿は,就労促進的方向性がますます強められているフランスの最低所得保障(RSA)について,法制度上からみえる就労促進的な方向性の具体的内容,および法制度が実現するところの実際の支援の現場で取られている運用体制の検討という側面から検討することによって,RSAがもたらしたものについて検討した。 RSAは手当の面からみればワーキングプアへの対象拡大という側面があるものの,漏給が指摘されるなど,手当の権利の後退がみられることを指摘した。また,運用体制からみると労働行政と福祉行政との連携強化によって就労への経路を作る動きが観察された。RSA受給者は概して労働だけでは生活できないような就労についている場合が多く,RSAにみられる就労指向型への社会扶助の変化は,労働市場に対して低水準の雇用創出を正当化する手段を与えることになったと指摘した。