今日の公共部門の労働の変化の方向性を端的に表わせば,それは「非正規化」と「市場化」である。地方自治体を例にとれば,住民福祉の前線にある市区町村に勤務する職員の3人に1人は,臨時・非常勤職員と呼ばれる非正規公務員である。さらに,業務委託や指定管理者制度を通じた公共サービスの民営化も進展している。 公共部門の今日の状況は,「正規非正規複合体」の地方自治体が,「行政民間複合体」体制で,非正規公務員・非正規労働者を使って公共サービスを展開しているといえよう。 その中で公共部門の労働に携わる正規公務員は,ますます「公共性」を喪失し,住民に寄り添うことができなくなってきている。さらには定員削減下において職務無限定に人事異動を進めた結果,与えられた自分の職務に閉じこもり,他者への関心さえ失いつつある。 本稿では,こうした公務労働の変質の状況を「公共性」,「専門性・専門性」のキーワードを軸に,試論としてスケッチした。